2014年9月12日金曜日

[記録]クリス事変について思う④:凪の始まりと足踏みの爪先

以前noteにあげたクリス脱退の一連の流れについての個人的な記録をここに再録したい。全5回のうちの第4回。


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2014/05/23 03:54





青天の霹靂から、あっというまに、1周間が過ぎた。
夜をあと一つだけ越えれば、EXOの単独コンサートが始まる。
7日前には、この週末を迎える自信が無かった。何とか手に入れたコンサートのチケットにも「見る自信がないし、どうせなら払い戻しになる中止になればいいのに」、「誰かに譲ろうか」と考えた。
でも、そうしなかった。
今、この机の上には、自分の分のチケットが残っている。ナイーブなポーズだけを自分に取ってみせて、行かないつもりなんて、始めから無かったのかもしれない。結局、私は見たいのだった。たとえ、それが1人欠けた11人だとしても。
来なければいいと思っては、早く来てほしいと願い、今は、この週末が、コンサートが終わって、足踏みをしているこの場所から動かされたい、と思っている。
ずっと、喉の奥に何かが詰まっているような
気分がしている。
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20日。


火曜日の20日、クリス事変発生からずっとトレンド入りしていた「크리스(クリス)」と「우이판(ウーイーファン)」が、ホットワードから消えた。
視界を騒がせていた日本語RTも、段々無くなってきた。
ヒステリーのように言葉の限りを尽くしていた、去った背中に矢を放ち続けたファンたちは、少しずつ落ち着きを取り戻していた。
変わったのは、数日前までクリスだったアイコンに映る横顔と、流れる画像にいる影の数だった。
グローバルパッケージツアー用の公式グッズリストが発表され、瞬間TLが色めき立つ。コンサートに向けて、着々と準備が進んでいる。ファンも、その方向に少しずつ向かって歩き始めている。


数日の間に、残ったメンバーが次々に更新するインスタグラムは、もう笑顔のそれに変わっていた。

ふと、クリスが最近更新していた写真を見つけた。写り込んだ車のナンバーを消していて、律儀だね、と笑われた写真。ユーザー名がgalaxy_fanfanと表示されるのを、今更のようにじっと見つめる。
クリスがインスタグラムを始めたのは、4月初めのことだったらしい。提訴の当初の予定日がリークされたように4月だろうと、5月だろうと、この頃にはもう彼の腹が決まっていたことは間違いないだろう。どんな気持ちで、彼は、新たなSNSを開始したのだろうか。

galaxy_fanfanというID。KRISの名は付けなかった。でも、galaxyって残してる。こんなところからも、彼が瀬戸際に残した思いを読み取ろうとしている自分が滑稽に思える。でも、そんなことばかりしている。自分が見てきた限られたクリスの像を浮かべて、無意味な微分ばかりを繰り返している。
ショータイムでの不機嫌そうな耳に、イヤホンがだらりと差し込まれていたこと。周りに気にしてほしそうに食べ物を口に含んでは「ネスタイリアニヤ」と呟いていたこと。スポンジボブのパンツの履き方まで、誕生日を迎えたチャニョルにアドバイスしようと一生懸命になっていたこと。

他のメンバーを捨てた、裏切った。私達は裏切られた。
ずっと、何だかピンとこなかった。

「私達は裏切られた」。

第一報を聴いてから何度も、「クリス、ごめんな」と頭の中で誰かが呟いていた。ごめんね、辞めようと思ってたなんて、知らなかったんだ。決意を固めていた時に、きっと心は違う方を向いていた時に、わからなかった。自分で作った勝手なイメージが慣性を持って、そっちばっかり見てた。そのとき、あなたは、数歩後ろからこちらを見ていたかもしれないのに。
結局、私は何も分からなかったし、何も出来ない。
そして、これからだって、分かることはできない。ずっと。



21日。

21日の水曜日、韓国のアイドルコラムサイトであるIDOLOGYにクリス事変について2つの記事が掲載された。
11人を擁護するファンのRTで当該サイトと記事の存在を知り、これといった期待をせず見に行った。しかし、これまで見た中で最も視点の一定した、かつ両陣営に適度な距離をとった記事のように感じ、読み進める(※1)。
前半の記事①には、クリスがグループを脱退しようとした理由とそれがどのような要因に起因するのか、彼と他のメンバーの差異に注目して語り、復帰の可能性、メンバーの反応、これからのEXOの起死回生プランやコンサートの実施、今後のコンセプト維持について、記者らが対談する形式で構成されていた。
後半の②には、国内外のファンダムの差異を分析し、それぞれの反応について少々掘り下げを行った後、12人支持派の特徴などに言及している。また、やや大きな文脈にも目を向けて、韓国ファンの海外嫌悪問題と、数日前から取り沙汰されている中国内のアンチ韓流、BaiduとWeiboの対立構造に関連した背景について簡略な整理がなされていた。また、今後の中国におけるSMエンターテイメントの展望、一番の被害者を誰と見るか?についてそれぞれ手短にまとめられている。
対談している記者らはアイドルやファンダム文化に詳しく、これまでの過程と衆目を集めたトピックを網羅し、過度に視点を偏らせることなしに取り扱っていた。それまでの「中立」を謳った文章はもちろんのこと、オンライン新聞やニュースサイトで見たどの記事よりも、この事態のあらましをただこちらに寄越してくれる内容だった。
しかし、この記事はtwitter上での拡散はそれほど活発でないようだった(※2)。それは、クリス事変がある程度、沈静化の流れに乗ってきていることもあるだろうし、一方では、誰の得にもならない記事だったからなのかもしれない。
きっと、誰もこの記事は翻訳しないし、そのメッセージは、多くの人に知られることもない。



コンサートの日が迫っている。

EXOという夢を目撃する日が、メンバー1人の不在という現実を突きつけられる日になってしまった。クリスのいないEXOを見るのが怖い。そこで、熱狂するだろう自分が怖いし恥ずかしい。

凪ぎ始めたTLには、クリスについての言及がなくなっていく。

クリスからベッキョンにアイコンを変えた彼女の憤懣も、
クリスへの惜別と愛着を整理しきれない別の彼女の悲しみも、
荒い波が徐々に引くように、その頻度を緩めていく。

こんな駄々こねのような足踏みをしていると、大人な誰かには冷笑されるかもしれない。でも、早すぎる。まだ、早すぎる。


それでも、必ず自分は行くのだろうと知っている。
ペンライトの銀色に染まる海を前に、そのとき私は笑っているだろうか。

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※1 「크리스 사태와 엑소의 위기, 어떻게 볼까 」
         (クリス事態とEXOの危機、どう見るか)
[原文韓国語] ① http://idology.kr/590 ② http://idology.kr/614

※2 IDOLOGYのクリス事態関連記事は、21日にアップされた後、23日午前1時の時点で、拡散の数は100RTほどに過ぎない。

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