2014年9月30日火曜日

ブログ管理人紹介

当ブログに初めてお越しの方々に、管理人ことアラサー4姉妹の自己紹介など。

この4人、叶姉妹的なアレで血縁関係はない。しかし、時としてそれより濃いKポぺんの絆で結ばれているのである。


<菜姐>

活動家との呼び声がひときわ高い、アラサー4姉妹の長女。Kポ歴は、2005年3月4日のMステでSe7enが『光』を歌うのを見てからのもうすぐ丸10年。2006年釜山短期留学、2007年(なぜか)北京留学を経てもKポ愛は不変。Se7en、1TYMを狂信的に信仰し、自らをYG教徒・iamygism(=I am YGism)と呼ぶ。そんな彼女も今ではすっかりEXO、GOT7ペンに。EXOは天、GOT7は地。BTSは…保留!福岡住み(国外逃亡予定)の三十路。ちなみに、名前の読みは「つぁいじぇ」。 twitter: @natmeg0516


<鮎>

料理上手なカッコいい働くお姉さん…!のはずがKぽという獣道に足を踏み入れてしまった次女。東京在住のKポ歴1年。べっくんに言われたい一言「アユヌナ、お腹すいたぁぁぁー!」べっくんのお口に合う韓国料理を日々考察し、辛いものが苦手だったが今では毎日キムチをほおばるまでに!「あの鮎がアイドルにホの字になるなんて、夢にも思いませんでした…」とは同級生おまるの談。


<おまる>

基本、睡眠=三度寝。三度の飯より寝るのが好きな三女。2006年夏、初めて韓国の地を踏んだ釜山にて、菜姐により東方神起のMVを伝道されたのが原体験のKポ歴8年。翌年韓国に交換留学、めんにむと出会う。現在、再び韓国在住。アイドルの和気藹々(ボディタッチあるとなおよし)をこよなく愛すアラサーであるが、見た目は高校生。このところ涙腺がさらに弱くなってきて、若者見るだけで泣けてくる、危険。韓国語、英語、関西弁の三カ国語を操る才女にして、結局のところその能力の大半をKぽに費やすという、野心の無さには定評がある。広く浅く聴く・見る方だが、東方先輩、EXO、GOT7は贔屓。韓国ドラマより映画が好き。twitter: @hesheme412


<めんにむ>

大阪在住。アラサー4姉妹中、齢の上ではマンネながら、精神的にはほぼ長女。 初韓国は2006年の家族旅行。その後韓国ドラマ経由で神話7集を聴き衝撃を受けK沼へ。2008年韓国留学、そこでおまると出逢う。現在も韓国にかかわる企業で日銭を稼ぐ日々。 周囲の友人が着実に人生の階段(主に結婚・出産)を駆け上る中、ひとり踊り場で踊り続けてKポ歴早8年。Kドルをマネジメント的な視点で捉えがち。合言葉は「事務所、大事」。神話のお嫁さん候補にはどの女優が良いか思案する境地には至った。Kぽ以外では全国津々浦々の芋を取り寄せてはその品評に勤しんでおり、直近はインドネシアの芋に舌鼓を打つなど。twitter: @men_324

2014年9月29日月曜日

[作文] Kドルを400字で語ってみる Vol.1-1 EXO作文編

活動家ブログ管理人の4人が、各々の視点と熱量で自由にKドルを語ってみようという見切り発車なコーナー。やっていく内にペースをつかもうと思っておりますので、鞭は打たないでやって下さい。心の折れやすいアラサー。

文字制限を付けようということで、懐かしの原稿用紙一枚分、すなわち400字に収めることにしました。
多いと見るか、少ないと見るか。
書くことがないグループ対しての叙述も、文字数埋めるスキル的な意味でなかなか見どころな気がする。

実際の400文字作文と、4人の作文に考察を加える解題の、前後編でお送りしたいと思います。

それぞれの400文字作文には、テーマとなるグループぺんとしての熱量、歴史、知識などを簡単に記した「スペックas◯◯ペン」を付加情報として記してあります。
そちらの方も参考にお楽しみ下さい。

第1回は、押しも押されぬ当代きってのスーパーアイドル、EXOです。


管理人4人の共通贔屓グループがEXOということで、
まずはこの方々について400文字、いってみましょう!


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【1.鮎】

「コムンクリジャネアネゲオナ…」
2013年秋、H氏の動画投稿により、彼らの存在を知った。 
凍った。 
kpopアイドルというのは、何となく日本のアイドルの偽物のような、化粧だけが濃い(特にアイライン!!)、みんな目の腫れぼったい連中だと思っていた。完全に食わず嫌いだった。EXOという名の彼らは私の先入観を打ち破り、端正な顔つきと極めの整ったダンスを披露した。ただ、日本ではあり得ないメロディ。これにはあまり共感ができなかった。 
なのでダンス見たさにYou Tubeを繰り返し見ていた。そうするとこれまで受け入れられなかったメロディが頭から離れなくなってしまったのだ。 
学んだ。「kpopアイドルは、タバコと同じです。アルコールと同じです。薬と同じです。」一度足を踏み入れてしまうと仕事中も移動中も彼らの音楽が耳から離れなくなり、動画や画像をがむしゃらに探してしまう。そんな日が来るとは予想だにしていなかった。(402文字)


[スペックasEXOペン]
kポップ=exo=べっくん。高校や大学にべっくんがいて(決して社会人の生活に彼がいるわけではない)、毎日楽しいグリーンデイズを過ごしていることを夢みながら現実逃避を繰り返す。テヨンとの関係に歯ぎしりしながらもべっくんの幸せと健康を切に願っている。


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【おまる】

EXO、それは永遠のレジェンドかつ今ここには無い光。惑星コンセプトを考えた人は今すぐ名乗りでて下さい。季節のカルピスセット差し上げます。KとMに分けて「完全体」を演出した人もです。年2回、ハムの人遣わします。EXOに数々の試練を与えてる神様、夢枕に出てきて理由をお教え下さい。毎日5回指定の方角に祈ります。 
酷過ぎる現実に打たれるほどに美しく、洗練されていく12人。あ、11人か。その割にショータイムとかで普通の男の子感出すからその気圧変化で耳が痛いです。危険。私、5月以降、彼らに過度な期待を当たり前のようにしていたと気づきました。恋も外仕事もしたいよね。惑星なんてトンデモ設定を嬉々としてマイ花畑に植えては水をやっていた自分の愚かさよ。 
でも、全て自力の能わざる別次元の届ける光を時間差で見ていると納得すれば、この悲しみも亦楽しからずや。ああ、結局惑星コンセプトを捨てれてないし、楽しくもないわ。(398文字)


[スペックasEXOぺん]
レイさんって何?神!物質に魂は宿らない主義なのに、聖なる夜に一人SMコンに赴きEXOA4をポスター買ってもた年末。レイチェンは世界を救うしフンハンは世界を浄化するので、グループの平穏が守られている限り精神衛生上エコフレンドリーなグループでもある。


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【菜姐】

EXO…遠い惑星からやって来た超能力を持つイケメン集団…そんなかなり痛い設定を携えて2012年4月8日(お釈迦様の誕生日!)にデビュー…というかこの地球に降り立った元12人組(T_T)12人で見た永遠は余りにも甘美で儚かった… 
늑미、으르렁ばかりが知られているが、実の所捨て曲がない!ここ数年すっかり在宅ペンと化していた眠れる活動家(※注 自分)を再び、いや前以上に燃え上がらせた罪作りなイケメン、もとい宇宙人。EXOじゃなかったら眠れる活動家は目を覚ますことはなかったのでは?というくらい強烈なインパクトで心臓も財布も鷲掴み。 
惜しむらくはリップシンクとダンススキルのばらつき。くりしゅ事変以降はどうにも負の連鎖が続いているようで落ち着かない…人気ばかりが一人歩きしてアイドルとしては短命に終わってしまうのでは?と心配で心配で思わず更に財布の紐も緩くなるヌナ泣かせなイケメン宇宙人たちである。(395字)

[スペックasEXOペン]
屋台でかわい子ちゃん(死語)からウルロンのMVを見せられてカイくんに堕ちたのがキッカケ。EXOデビューの頃は噂は耳にしても若造なんて!て見ようとすらしていなかった食わず嫌い女。今ではカイド、カイルー、ニョルカイが大好物。


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【めんにむ】

どうかするとトンチキなSMのコンセプトを見事に体現してみせるメンバーのスキル。作り込まれた背景設定。ペンを焦らせに焦らせてからのデビュー、そしてカムバ。さすがSM、私自身はどちらかというとSMの手腕に感服している部分が大きいのではとある時から気づいた。
メンバーが11人もいるから、ペンダムだけでなく大衆的に全員にスポットライトが当たるまで時間がかかるだろうけど、ひとりひとりにスポットライトが当たるまで辛抱強く活動してほしいし、活動させてください!イスマン先生!
そんな願いとは裏腹に、脱退に熱愛にとかなり早いスパンでアイドルグループが経験しうる通過儀礼を経ているから「どうどう…君らまだ3年目や、ぼちぼち行こうや、そんな急いで時を駆けるでない」とヒヤヒヤしながら彼らを見守っている。 
そしてEXOが今後どんな歩みを見せるのか、「家政婦は見た」ばりのゲスさで目撃者になっていきたいと決意するのであった。(402文字)


[スペックasEXOペン]
デビュー前からsm新グループということで色めきたつ。ヒストリーの練習動画でチェン、シウミンに光るものを感じチェンペンに。生暖かく見守ろうと思ってる割には日本ペンミ、韓国コン、日本コンとほぼ制覇。


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400字で語るシリーズ第1回、いかがでしたか。

Kポファン歴がが比較的長い3人と、Kポップ処女航海がEXOであった鮎のアクセントの置き方の違いが見えます。そんなこんなは解題シリーズで深く掘り下げることにして、本エントリはここまでにいたしましょう。

次回、400字で語るシリーズ第2回、テーマは「防弾少年団」です!
それぞれの熱量が明らかに違うグループを選んでみました。どうぞお楽しみに。

2014年9月12日金曜日

[記録]クリス事変について思う⑤(終):銀色の海を、見上げる

以前noteにあげたクリス脱退の一連の流れについての個人的な記録をここに再録したい。全5回のうちの最終回。

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2014/05/27 03:53


「クリス事変について思う」と名前をつけて書いてきた、この備忘録のような日記のような文章も、ライブ後記を兼ねた今回でひとまず区切りにしたい。今後、何か事態の進展があれば記録すると思うけど、ここまでの自分の感情の変遷と事態の動き、そして今回、直接見た11人の姿を書いて終わりにしようと思う。多分に私見と私情を交えたこの文章を読んでくださった方々、ありがとうございました。
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24日。
ついにこの日が来た。クリス事変後、ただの一週間後が、7日間のカウントダウンに変わってしまった。オリンピック競技場にあるコンサート会場の周りには11人分の巨大フラッグが翻り、会場は熱気に溢れていた。
軽装になり、最低限の荷物とともに中に入る。花道を巡らせて、モニターも各方向に配置した設計で、明らかに年末のコンサートよりも観客への配慮がなされていた。

正面ステージの両端には、2本の生命の樹がその枝を茂らせている。

スタンディングの後方から見たステージは、それなりに余裕があり、開演以降も時折アタックをかまされた以外は、混乱はそれほど生じていなかった。
前に進もうとして戦場最前線に紛れ込んでしまった年末SMTWと比較し10倍楽で、メンバーもモニターも10倍良く見れた。周りに色んなメンバーが来るため、四方上方を仰いでどこに行けばいいのか惑う、さながら宇宙戦争の主人公親子状態だった。ただ、スタンディング前方は3階から見ていた友人曰く、非常に密度が高く危険だった様子。確かに、開演前から黒服がペンカフェグッズの団扇で柵を挟んでファンを仰いでいるのが見えた。
Dブロックから見た公演は、横から正面からいっぱいメンバーを凝視したはずなのに、残っているのは光の海に浮かんでいる後ろ姿と、彼らの発した言葉がほとんど全てだった。今回は、自分にとってそのような機会だったんだと思う。
コンサートが始まる。ソロステージも盛り込んだセットリストは、めぐるましく息つく暇もなくて、終わってみるとその時間以上に密なステージだった。
11人のメンバーは、広いステージを縦横無尽に移動し、たゆまず観客を魅了し続ける。一人一人の動きが、表情が、汗が見える。
セフン。ソロステージは、堂々として力の入り過ぎない、彼の良さが十分に現れているダンス。もう、マンネと呼ぶには頼もしすぎる、正しくまっすぐ育った背中を見ていた。タオちゃんが、クリスとの写真をアップする頻度が減る度に、セフンとの笑顔が増えていったことを思い出す。タオちゃんが好んでアップする、自分らの足元を切り取った写真。これからも、タオちゃんの横にはいつでもセフンがそばにいる。それに、安心する一方で、心臓をかぎ針で引っ張られるような寂寥がなかなか去らない。精神的にも、セフンはもう、一つの支柱になっている。
スホ。スホさんは、何と言っても顔がいい。整っているという意味だけじゃなくって、彼の表情は言葉以上に雄弁だという意味で。1人で歌って踊るよりも、誰かと居たほうが映える人だなと思った。悲しくて苦しい歌がよく似合う。でも、そういう顔はステージだけで見ていたい。できるだけ、辛さや悲しみに顔を歪める彼の姿は見たくない。中毒を終えてフラフラになったカイくんがあわや倒れんと気を揉んだときに、隣に立っているのがスホさんで良かったと思った。そういう人。彼のことばに期待してしまう、そういう人。
カイ。踊っている時の、狂気が四肢を持ったような形相と、瞬間に崩れるやわらかな笑顔の対比は、ダンスの次に神が与えたもうた2番めのギフトだと思った。誰もが彼を見ずに居られないし、愛さずにはいられない。そういう自分の特別な場所から、しかし、彼は、丁寧にこちらを見つめてまっすぐに声を掛けてくれる。それは、神に与えられたものではなく、彼が生きてきた中で積み、獲得した、最も尊い徳だと思った。
タオ。一番良く笑って、一番大きく叫んで。舞台に飛び出した弾けるような笑顔が嬉しい。ここのところの彼は、過去を自分の背中から引きちぎってはどんどん捨てていくような、頑なで一方を向いたエネルギーに溢れている。でも、それは悲壮なものではなくて、これからの彼の柔軟な強さに変わっていくといいなと思う。内に閉じ込めるのではなく、外に放出することで強くなればいいと思う。たくさん笑って、たくさん泣いて、これからの道を進んで欲しい。舞台に映える人。そろそろ武術以外のソロステージが見たい。
チャニョル。勝手に、器用貧乏という印象を今まで持っていた。だが、身体という制限から突き抜けんとせんばかりの全力のダンスをみて、彼の良さはこういうところにもあるのかと知った。今回のコンサートで一番印象が変わった。顔が変わってきたように見える。精悍な、自覚の刻まれた顔になってきた。汗が滴る腕と胸元が官能的。現在、メンバー内で一二を争う忙しさだと思うけれど、極限の状態で発する魅力を彼に見て、同時に感じる興奮と自己嫌悪。その心身共にある真っ直ぐさが、一番の魅力だと思った。
ベッキョン。とにもかくにも人気。ソロのピアノ弾き語りと曲の選択までファンの欲しいところにまっすぐボールを投げてくる人。ハンドルの遊びの部分を残せる人。今日は、ちょっと笑顔が少なかった。外に発するメッセージと自分の中の感情が、バランスを違えているのかもしれないと思った。ベッくんは、どう考えてもこのチームに不可欠なメンバーだけど、それが負担になってないといい。杞憂かな。もっと、皆に頼れるといい、と思う。外仕事ででもそういう場が、見つかりますように。個人的には、ベッくんの合気道が見たい。
レイ。いつでもメッセージが変わらないことはテンプレと評されることもあるけど、この人の場合はそれが、様式美を超えた安心と感動をもたらす、と実感する。ホッとして涙が出るかと思った。「皆可愛い」と「体調に気をつけて」と、微笑みながらずっと言ってもらいたい。それを聞くために、これからも現場に行こうと決意を新たにする。今回は、「みなさん、幸せとは何でしょうか?」という名言まで発して、私はイシン一神教に完全に帰依した。記者会見の対応までも一貫して、プロすぎた。「この人を好きでよかった」と、ファンに思わせてくれる人。パフォーマンスはもちろんのこと。
ルハン。今までは、喋る時に決まりきったことしか言わない物足りなさがあった。今回、ラストのMCでそれぞれがクリスの件を暗に示唆するメッセージを発する中、最後にマイクを持った彼が「今度コンサートするときはもっと(ダンスの振りで服の裾をお腹が見えるように)上げますね!サランハムニダ!」と言って場を沸かせたことに素直に感動した。お涙頂戴を選ばなかった彼なりの矜恃なのかと思った。各方面に、まだまだ伸び代を感じる。もう少し肉がついたら、ダンスに良いのでは。顔が本当に小さいし美しい。
シウミン。恥ずかしがり屋の職人みたい。群舞や、誰かの後ろで踊っている時にはあんなに100%に、クールに踊っているのに、自分にスポットが当たると突然剽軽に、照れ隠しに走っているように見えるのは何故だろう。チェンが今回自分から前に出ようとしていたのとは反対に、後ろで敵の侵攻に備え待機するDFのようにシウミンは見えた。たまには溢れるくらいの自信を持って欲しいし、もっと前に出てきてほしい。そういうシウミンが見たい。もっともっと、欲張って欲しい。その控えめさが彼の人気の故なんだろうけど。ゼンマイ人形のように、たまに時空を止めちゃう一瞬の、瞬間最大風速がすごい。
チェン。チャニョルと共に、個人的にステージングが見違えたと感じた。ダンスもうまくなっているし、何よりフルスロットル感が見る者を熱くさせている。トークでも、もともと彼に負う部分は大きかったように思うけど、より安定感があって、より頼もしく見えた。中国ではまだ、これを発揮できないのが残念。そしてチェンチェンは、カイ君と並んで自分だけの言葉を持っている人。「雨降って地固まる」は、寂しいけど、真理なのだと思った。これからの活動で、もっと大っきくなると思う。
ギョンス。鶴の一声みたいな人。1人でセンターステージで微動だにせず歌っても、会場を彼の声で包んでいた。こういう人がメンバーにいてよかった。お茶目なところが垣間見えるのも大好きだ。「これからが、始まり」然り、要所要所でギョンスがいう言葉には、ファンもメンバーも大きく影響されている。皆に信頼される人。メンバーに愛される人。政治的な局面でもうまくやれると思った。それが頼もしくもあり、恐ろしくもあった。


コンサートが進んでいく。

揺れるペンライトの銀色に光る海を背に、生命を燃やすように踊っている青年を見て、ぽろぽろと涙が落ちる。それがどういう感情なのか、自分でも全然分からなかった。
『XOXO』のイントロがかかり、会場から歓喜の声が上がる。一番好きな曲で、一番聴きたい曲だった。大きな会場を埋めるように、幸せな旋律が、震える空気を満たしていく。
メンバー達が、微笑みながら踊っている。
一番、幸せに溢れる曲。一番、柔らかで優しい曲。
私は、声を上げて泣いていた。
なんて美しいんだろう。何て、悲しいんだろう。
そこにいると思ってた人が、1人足りない。
居て欲しい人が、そこにいない。これからも、ずっといない。
優しいメロディーで充満した空気の未だ冷めやらぬ中、四方のモニターには、メンバーらのこれまでの姿が順番に映しだされる。年端もいかぬ頃からデビュー前、つい最近のものまで。
彼らが、互いにまだ出会う前の肖像。
彼らが出会って一つになったという奇跡が、この上なく尊くて、それ以上に、この場にいない1人の不在に胸が締め付けられるほど寂しい。
誰かがいなくなることは、別れというのは、何故こんなにも寂しいのだろう。出会った時は、生まれてきた時は、あんなに嬉しいのに。
自分が好きな人達が離れ離れになってしまうのは、時に自らの別離の何倍もの悲しみを伴う。私は、そこに勝手に、色々な夢を見ていたから。
人の夢に上がり込んでは、散々好き勝手に楽しんだ挙句、色とりどりのクレヨンでいっぱいに書いたその夢が、醒めて1人で泣いている。奇跡は、永遠なんかじゃなかった。

一つ気づいたことがある。
スタンディングDエリアからメンバーを見るには、どこであっても見上げなければ駄目だった。首をいっぱいに傾けて上方のステージを見ると、彼らが歌い、踊っている。
身体はすでに汗だらけで、それでも一瞬一瞬の生命を燃やすように、踊っている。その後ろには、美しい銀河が見えた。ファンが一生懸命に揺らす、銀色に輝く海が見えた。
こういうことなんやな、と思った。
いつも、私は、彼らを見上げている。彼らの輝きと、彼らを照らす銀色の光が眩しくて、とても美しい。まっすぐに見ようとしても、なかなかちゃんと見れない。そんな中でも頑張って、首を傾げて仰ぎ見ながら、目を細めながら彼らの像を目に焼き付けようとする。
「メンバーが前を向いて進んでいるのだから、私達も前向きにならなくちゃ」
何度も、何度も聞いた言葉。
最後のところで、どうしても納得できなかった。
ハムケ、ハダ。一緒に進む、という美しい合言葉。
「同じ方向を見て、一緒に進んでいる」という自分の思い込みが、実際と大きく食い違っているのを知ってから、その事実は、細い傷を絶え間なく付けられるような鈍い痛みを心中に呼ぶことを知った。
私は、ファンは、「前向きになる」ことを選択できるような、そんな立場にないのではないか。
「一緒に進んでいく」というワードは温かいけど、彼らと私達の道は別々だということは勿論、12人の道もまた1+1+…の集合であることを知った。
前向きになって11人を支持することは、クリスの不在を「受け入れる」ことなのか。彼を忘れたように振る舞うことなのか。過去を懐かしむ行為を断罪することなのか。同じ道を、11人にこれからも強制し続けることなのか。こんなに寂しいのに「前向き」にならなければいけないなんて、これは何かの拷問だろうか。
EXO=11の狼煙。それが「前向き」ということなのか。
違うと思った。
少なくとも、そんな「前向き」は自分には出来ないと思っていた。

会場いっぱいに歌い踊り、光り輝く彼らを見ている内に、その言葉の違和感について、一つの個人的な解を得た。
「前向きに」、「切り替える」、「割り切る」、「冷静に」。
私には、彼らの一挙手一投足とその決断について、前を向いたり後ろを向いたり、ポジティブとかネガティブを選択する立場にはない。そんなのはきっと、思いあがりだ。彼らの歩みはメンバー自身が決めることでしかないし、それを評価し断罪する行為は私達の能うるところではなく、無意味な憎しみだけを産んではこちらを放って去っていく。「前向き」になることも「切り替え」進むことも、「割り切る」ことも、主体は彼らだ、メンバー達だ。私には、過程ではなく既に「結果」となったメンバーの決意を受け取って、その歩みを遠く見守ることしかできない。
個人の決定の総体としてステージが在り、アイドルとしての彼がいる。そこから降りると決めたことについて、メンバーが彼を断罪することは仕方ないにせよ、どうしてファンが彼らに成り代わってその罪を問うことが出来ようか。同じ道を歩んでいるのは、彼ら12人だったのに。
道が異なってしまうのは仕方ない、と言い聞かせている。
去った背中を非難し、極限状態の中でこれからの決意を発する彼らのまなざしに、ともに在りたいと祈り、それに呼応し出来る限りの声を挙げたいと願う。
ただ、行き先を違えた者の残した軌跡までを0か1かで葬って先に進むことそれ自体を、前向きな、豊かな営みだとは到底思えない。メンバー達の「前向き」は、ポーズとして必要なものだ、それが本心であろうと虚実であろうと、それは私の知るところではないし、問うこともできない。ただ、ファンにもそのポーズは同様に求められるものなのだろうか?「冷静に」なんて、どうやったらなれると言うんだろう。あんなに、好きだったのに。今だって、大好きなのに。
彼の、彼らの決定を黙って見守る以外に残された、ため息を付いて背を向けるには私は彼らを愛しすぎているし、その情動を憎しみに変えるには、あまりにも勿体無いほどこの思い出は美しすぎる。
12人が11人に減った。それだけ。それが、悲しいだけ。寂しいだけ。
帰ってくるなんていう希望は早々に消えてしまったし、これからの活動だって、どっちも応援したいに決まってる。どっちかを憎むなんて、非難するなんて出来るわけないし、そんな権利も筋合い覚悟も欲望も、私には無い。
「これからが始まりだ」という文句も、ファンへのメッセージだということは分かるし、その言葉でメンバーらが自らに鞭打っているのだろうことも痛いほど感じている。
でも。
「イジェプットシジャギダ(これからが始まりだ)」その文言を印刷したスローガンが配られ、メンバーもそれを手にした最終日に、自分が居なかったことに心底ホッとした。それを掲げる選択を課されること無く「EXO、サランヘ」だけを掲げることができた昨日に、心から感謝した。
イ・スマンコールに揺れる会場で、自分が決断を迫られることを考えるだけで、総毛立つ程の恐怖を覚えた。
EXOの名を守り続ける彼らは、これからも前だけを向いて走り続けなければならないだろう、そういう場所に彼らはいる。だからせめて、少しだけ立ち止まれる時間を。11という数字の既成事実だけが重なって、それに心が鈍する前に。これまでとこれからを整理する、少しだけの時間をと願う。スタートが切られた、気の遠くなるような公演の日程を見ると、加速度を上げる個人スケジュールの発表を見ると、段々不安になってくる。
そうしないと、彼らもファンもこの「現実」に摩耗されてしまうんじゃ。だって、2年だ。1週間で前を向ける2年なんて、そんなの、嘘だ。信号一つで切り替えられる、簡単な仕組みの機械なんかじゃない。だから。だから。大きな声で「11」を、力強く「これが始まり」を掲げるメンバーを見ると、心臓のあたりがきゅうと音を立てる。喉の奥にある取れない塊がグッと上がってくる。それに激しく呼応する客席の叫び声に、足が竦んで動けなくなる。いつか、この強行軍が終わった時、彼らの脛には小さな傷が重なって赤黒く爛れてはいないだろうか。弾けた笑顔が張り付いて、固い能面になっていないだろうか。ファン同士の憎しみが固まって、心の隅を覆っていないだろうか。去っていったあの子の背中は、そのときまっすぐ伸びているだろうか。
それだけ、彼らの2年の体積は、重かったのだと信じたいから。
いつもメンバーが言ってくれる「一緒に進む(ハムケハダ)」というメッセージ。聞く度に嬉しく暖かくなるけど、それは叶わぬ夢、欺瞞だと今回のことで悟った。
彼らのステージを小さな光で照らして「共に在る」事はできるかもしれない。けど、「共にする」ことは出来ない。彼らが前を向くことと、私達が「前向きになる」ことは別々なのと同じ。
私は、前を向いた彼らと「共に在る」ことは許されても、それを「共にする」ことはできない。「12」から「11」の変化も、それを両腕に掲げて進んでいくことも、私には知る由もなかったし何の為す術も存在しない。何も出来ないし、いつも結果だけが後から両手に落ちてくるのだから。
彼らの決断を前に、それをひっくり返すことなんて出来ないし、小さく頷いてその「現実」を黙って胸に収めるしかできない。そして、唯一の残ったもう一つの選択肢、結果を受け取らずにその場を立ち去るには、手遅れなほど彼らを愛しすぎている。
私は。ファンというものは、いつも彼らを見上げている存在なのだと思う。
そこで、出来る限りの光と声で、彼らとともに「在ろう」とすることで、その道を照らす小さな灯になるしか、出来ることはないのだと思う。
前向きも後ろ向きも、ポジティブもネガティブも、そんなことを「選択」できるところに私はいない。
だから、この悲しみも怒りも、やるせない思いも、置いていかずに引きずりながら共に在りたいと願う。それが、進む彼らの軌跡を見続けるということだと思う。それが、かつて12人だった彼らの「ファン」である自分に唯一できることだと、そう思う。そして、前を向くと決めた彼らをずっと、まっすぐ見続ける。心の中で祈りながら。そういうことしか許されていないと思った。

私は、彼らをずっと、ステージの上で光に照らされる彼らをずっと、見上げ続けている。見上げながら、彼らの進む道を目で追っている。追いながら、自分にずっと問うている。美しさに涙しながら、興奮に震えながら、寂しさをあの手この手で誤魔化しながら。自分の感情と欺瞞の振り子に目を眩ませながら。いつかは忘れてしまうだろう自分の軽薄さに、時折目を瞑りながら。そして、少しずつ、本当に忘れていきながら。
彼らは、銀色の海に浮かんで眩しく光っている。その煌めきに、私は目を細めながら願っている。少しでもその輪郭に、この目に結ばれた像の中に、たくさんの嘘の中の幾許かの本当があることを。自分が、この輝きを、その本当を忘れないことを。願いながら、祈っている。この溢れる銀色の光が、これからも前に進み続ける11人と1人に、等しく降り注いでくれることを。彼ら12人一人一人の歩む道が、それぞれに豊かな微笑みで彩られることを。
会場を出て、桟橋のふもとで友人と合流する。「ウェーイ!」とハイファイブをして、興奮気味に彼らの姿を描写する。すっかり暗くなった空には、「We are one」の風船がぼうっと浮かんで見えている。止まらないコンサートレビューを続けながら、もう一つの頭では、銀色の海を眺めている。かつて12人だった青年らを包む、「ギャラクシー」と呼ばれた光の海原をずっと思い出している。

[記録]クリス事変について思う④:凪の始まりと足踏みの爪先

以前noteにあげたクリス脱退の一連の流れについての個人的な記録をここに再録したい。全5回のうちの第4回。


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2014/05/23 03:54





青天の霹靂から、あっというまに、1周間が過ぎた。
夜をあと一つだけ越えれば、EXOの単独コンサートが始まる。
7日前には、この週末を迎える自信が無かった。何とか手に入れたコンサートのチケットにも「見る自信がないし、どうせなら払い戻しになる中止になればいいのに」、「誰かに譲ろうか」と考えた。
でも、そうしなかった。
今、この机の上には、自分の分のチケットが残っている。ナイーブなポーズだけを自分に取ってみせて、行かないつもりなんて、始めから無かったのかもしれない。結局、私は見たいのだった。たとえ、それが1人欠けた11人だとしても。
来なければいいと思っては、早く来てほしいと願い、今は、この週末が、コンサートが終わって、足踏みをしているこの場所から動かされたい、と思っている。
ずっと、喉の奥に何かが詰まっているような
気分がしている。
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20日。


火曜日の20日、クリス事変発生からずっとトレンド入りしていた「크리스(クリス)」と「우이판(ウーイーファン)」が、ホットワードから消えた。
視界を騒がせていた日本語RTも、段々無くなってきた。
ヒステリーのように言葉の限りを尽くしていた、去った背中に矢を放ち続けたファンたちは、少しずつ落ち着きを取り戻していた。
変わったのは、数日前までクリスだったアイコンに映る横顔と、流れる画像にいる影の数だった。
グローバルパッケージツアー用の公式グッズリストが発表され、瞬間TLが色めき立つ。コンサートに向けて、着々と準備が進んでいる。ファンも、その方向に少しずつ向かって歩き始めている。


数日の間に、残ったメンバーが次々に更新するインスタグラムは、もう笑顔のそれに変わっていた。

ふと、クリスが最近更新していた写真を見つけた。写り込んだ車のナンバーを消していて、律儀だね、と笑われた写真。ユーザー名がgalaxy_fanfanと表示されるのを、今更のようにじっと見つめる。
クリスがインスタグラムを始めたのは、4月初めのことだったらしい。提訴の当初の予定日がリークされたように4月だろうと、5月だろうと、この頃にはもう彼の腹が決まっていたことは間違いないだろう。どんな気持ちで、彼は、新たなSNSを開始したのだろうか。

galaxy_fanfanというID。KRISの名は付けなかった。でも、galaxyって残してる。こんなところからも、彼が瀬戸際に残した思いを読み取ろうとしている自分が滑稽に思える。でも、そんなことばかりしている。自分が見てきた限られたクリスの像を浮かべて、無意味な微分ばかりを繰り返している。
ショータイムでの不機嫌そうな耳に、イヤホンがだらりと差し込まれていたこと。周りに気にしてほしそうに食べ物を口に含んでは「ネスタイリアニヤ」と呟いていたこと。スポンジボブのパンツの履き方まで、誕生日を迎えたチャニョルにアドバイスしようと一生懸命になっていたこと。

他のメンバーを捨てた、裏切った。私達は裏切られた。
ずっと、何だかピンとこなかった。

「私達は裏切られた」。

第一報を聴いてから何度も、「クリス、ごめんな」と頭の中で誰かが呟いていた。ごめんね、辞めようと思ってたなんて、知らなかったんだ。決意を固めていた時に、きっと心は違う方を向いていた時に、わからなかった。自分で作った勝手なイメージが慣性を持って、そっちばっかり見てた。そのとき、あなたは、数歩後ろからこちらを見ていたかもしれないのに。
結局、私は何も分からなかったし、何も出来ない。
そして、これからだって、分かることはできない。ずっと。



21日。

21日の水曜日、韓国のアイドルコラムサイトであるIDOLOGYにクリス事変について2つの記事が掲載された。
11人を擁護するファンのRTで当該サイトと記事の存在を知り、これといった期待をせず見に行った。しかし、これまで見た中で最も視点の一定した、かつ両陣営に適度な距離をとった記事のように感じ、読み進める(※1)。
前半の記事①には、クリスがグループを脱退しようとした理由とそれがどのような要因に起因するのか、彼と他のメンバーの差異に注目して語り、復帰の可能性、メンバーの反応、これからのEXOの起死回生プランやコンサートの実施、今後のコンセプト維持について、記者らが対談する形式で構成されていた。
後半の②には、国内外のファンダムの差異を分析し、それぞれの反応について少々掘り下げを行った後、12人支持派の特徴などに言及している。また、やや大きな文脈にも目を向けて、韓国ファンの海外嫌悪問題と、数日前から取り沙汰されている中国内のアンチ韓流、BaiduとWeiboの対立構造に関連した背景について簡略な整理がなされていた。また、今後の中国におけるSMエンターテイメントの展望、一番の被害者を誰と見るか?についてそれぞれ手短にまとめられている。
対談している記者らはアイドルやファンダム文化に詳しく、これまでの過程と衆目を集めたトピックを網羅し、過度に視点を偏らせることなしに取り扱っていた。それまでの「中立」を謳った文章はもちろんのこと、オンライン新聞やニュースサイトで見たどの記事よりも、この事態のあらましをただこちらに寄越してくれる内容だった。
しかし、この記事はtwitter上での拡散はそれほど活発でないようだった(※2)。それは、クリス事変がある程度、沈静化の流れに乗ってきていることもあるだろうし、一方では、誰の得にもならない記事だったからなのかもしれない。
きっと、誰もこの記事は翻訳しないし、そのメッセージは、多くの人に知られることもない。



コンサートの日が迫っている。

EXOという夢を目撃する日が、メンバー1人の不在という現実を突きつけられる日になってしまった。クリスのいないEXOを見るのが怖い。そこで、熱狂するだろう自分が怖いし恥ずかしい。

凪ぎ始めたTLには、クリスについての言及がなくなっていく。

クリスからベッキョンにアイコンを変えた彼女の憤懣も、
クリスへの惜別と愛着を整理しきれない別の彼女の悲しみも、
荒い波が徐々に引くように、その頻度を緩めていく。

こんな駄々こねのような足踏みをしていると、大人な誰かには冷笑されるかもしれない。でも、早すぎる。まだ、早すぎる。


それでも、必ず自分は行くのだろうと知っている。
ペンライトの銀色に染まる海を前に、そのとき私は笑っているだろうか。

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※1 「크리스 사태와 엑소의 위기, 어떻게 볼까 」
         (クリス事態とEXOの危機、どう見るか)
[原文韓国語] ① http://idology.kr/590 ② http://idology.kr/614

※2 IDOLOGYのクリス事態関連記事は、21日にアップされた後、23日午前1時の時点で、拡散の数は100RTほどに過ぎない。

[記録]クリス事変について思う③:The boy who cried wolf

以前noteにあげたクリス脱退の一連の流れについての個人的な記録をここに再録したい。全5回のうちの第3回。

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2014/05/22 05:58 

クリスが事務所を相手取り訴訟を起こした15日から週末が明け、1日、また1日と時間が経っていく。
朝目覚めてしばらくして、朦朧とした視界の中で気づき始める。私は、クリスがいなくなったことに、慣れ始めている。「現実」というものは、こちらが受け入れ承認するものではなく、向こうから少しずつ近づいてくるものなのかもしれないと、薄くなった布団の中で考える。
19日。
クリス脱退から週が明けたこの月曜日は、「11人を対象とした悪質なデマが一斉に広まる」とされた日だった。週末から注意喚起のツイートがTLを埋め、少なくないファンが動揺し「浄化運動」に精を出していた。
某メンバーの中国ファンが書いたとされる「状況整理」の文章が、未だに何度も目に入る。既に誰もが目を通しただろうに、RTの回数だけが空虚に伸びていく。
加えて、SMの株主と自称する者が韓国の巨大掲示板サイトに載せた文章(※1)が流通し始める。そこには、クリスとSMエンターテイメントという対立構造の背後により大きな、複数の中韓企業同士の対立関係が在ると示唆されていた。
時をほぼ同じくして、とあるファンが作成したKpopコミュニティーにアップした文章(※2)の韓国語翻訳も目立つようになった。こちらも、クリス事変の背後に存在するより大きな企業抗争の存在を示唆したものではあるが、よりクリスの個人的な脱退理由や健康状況に言及した内容であった。文章の最後は、クリスは利己的なリーダーであり、私は11人の側に付く、といった立場表明で結ばれていた。
一連の騒動の背後に大きな権力争いがある、という指摘には、正直「そうかもしれないし、そうだとしてもどうしろというのか」と感じる。私が差し当たって知りたいのは、「クリス」もしくは「ウーイーファン」が主語になる問題であって、大企業を主体とした物語に彼を結び付け語られても、心の持って行き場がない。ましてや、その陰謀の一端に彼を位置づけ断罪するなんて。
<本当のことを知って下さい> <真実を見て下さい>
自分が好んで見ていたファンアートの作者が、好感を持っていたEXOファンが、際限なく尖ったことばを投げかけてくる。それが、彼女らの誰かが一生懸命翻訳したであろう日本語であることが、辛い。彼女たちも切実であろうことが分かってしまうのが、遣る瀬ない。
流れてくる写真に、FAに、ビクビクしながら影の数を確認している自分がいる。
クリス事変以降一度もTLに姿を表さない、FA作者のEXOファンがいた。私は、その子の描くセフンが大好きだった。彼女のweiboのページに接続し、祈るような気持ちで更新履歴を確認する。中国語が出来る友人の力を借り、彼女の心境を確認しては希望を持ち、ホッとした気持ちになる。疲れる。

結果として、この日、喧伝されていた「ひどいデマが一斉に流通する」に該当するような現象は起こらなかった。「浄化運動」が功を奏し、悪行を未然に防いだ、と人によっては言うのかもしれない。
数日の間、メンバーを守れと声を荒らげ、RTを流しまくっていたファンたちは、一切、それについて語らない。


頭の後ろ辺りで、オオカミ少年の寓話を思い出している。


むかしむかし、あるところに、共同体の平安を脅かす存在、オオカミがやってきたと声高に叫び、村の住人を怯えさせては笑う少年がいました。オオカミなんて、本当は居ませんでした。少年は、嘘をついて人を騙すのです。でたらめを叫び続ける内に、彼の言葉は軽くなってしまいます。もう、誰も彼のことを信じる人はいません。やっと、本物のオオカミが目の前に現れた時には、村の中で彼のいうことを信じる者は、誰一人としていなくなっていました。

ファンは、私たちは、村人のようだ。四方から、鼓膜を震わす声が次から次へと聞こえてくる。その声の大きさ、切実さに何度と無く戸惑い、手当たり次第にその言葉の真偽を確かめようとする。不信だけが、際限なく澱のように淀んでは積もっていく。
私たちが怯える「オオカミ」は一体どこにいるのだろう。そもそも、「オオカミ」って何だっけ。あの少年の声は、こんなに鋭かったっけ。
その内、村人は疲れてしまう。甲高い声は、声色を変えながら、オオカミを他の存在にすり替えながら、鳴り続けている。

ふと、その寓話の英題を思い出す。
<Boy Who Cried Wolf>

優しかった少年、笑いながら互いの名を呼びあって、自らの空間を徐々に強固に狭めていった少年ら。私たちがうっとりと聞いていた彼らの歌は、ここのところ、尖った叫び声に変わってきている。
少年らの集ったあのアジトも、そこに掛けられた12の肖像も、春が来る前に取り壊されて無くなってしまった。
戻るべき場所を失った少年らの声は不吉な幻聴になり、私たちの耳にこだましている。


数日後に迫ったEXO初の単独コンサートが「11人で」行われると、公式HPでの発表があった。
言及されない残りの1人を、3つの言葉が混ざった壁の落書きを、今はもう無い12人の隠れ家のことを、ぼんやりと考えたまま今日も夜が明ける。

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[記録]クリス事変について思う②:噂についての備忘録

以前noteにあげたクリス脱退の一連の流れについての個人的な記録をここに再録したい。全5回のうちの第2回。
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2014/05/19 03:52

週末の日曜日、クリス事変発生から3日が経った。
去った仲間の背中を厳しく断罪するインスタグラムを見た当日の夜は、何故か、機嫌の良さそうな黄子韬が、何か話したそうにこちらに向けて微笑んでいる夢を見た。
翌日、タイムラインに流れてきたクリスとタオの仲睦まじい姿を見て、自分が、微笑む彼らの姿を、あたかも永遠に続くとぼんやりと、そして浅はかに信じていたという事実を、突きつけられる。
ずっと開いてると思っていた花畑への扉は、本当に突然に、冷たく固く閉ざされてしまった。
予想外の時期に発生したクリス事変は、収束の気配を見せるどころか加熱の一途を辿っており、SNS上では今日も変わらず情報戦線と舌戦が繰り広げられている。

流言デマに関する噂とファンの反応

週末であった17日から18日にかけて、TLを確認する中で新たな流れを目にした。
昨日17日から活性化していた「浄化運動」に関連して、数々のファンサイトが次のような注意喚起をし始めた。
「故意に流されたEXOメンバー11人に対する悪質なデマを信じないように」
いじめや性暴力、薬物使用など、11人のメンバーに関するおよそ荒唐無稽なデマが流されている、という警告だった。
中国の某メンバーのファンが、中国の情報操作や今回の訴訟の流れを整理した文章(日本語訳: http://exo11.tistory.com/m/post/1 )が流通した後であることも作用したのだと思う、この手の声明は中国韓国のファンには勿論、日本ファンのネットワークにも流通し始めている。
デマの件に関しては、日本ファンは「浄化運動」(検索語をデマがらみの単語以外で入力すること)に協力はするけれど、その首謀者サイドとして糾弾されるクリスについての言及は未だ少ない状況。クリス、というより、「中国の」情報操作、というところに焦点が当たっているのかもしれない。でも、徐々にではあるけれど、クリスへの不信の声が見え始めている。
ただ、「12人に戻って」「帰ってくる」と発する声は減ったものの、「クリスがEXOの一員であった時代」を否定する者は多く見られない様子。
EXO=11か12か、というもう一つの問題についても「これから11人が前を向くならそれを応援するのみ」「11人を応援することと、抜けた1人をこき下ろすことはイコールではない」という立場を採っている者が、今のところの日本のファンの大多数であるように見える。
こういった日本ファンの態度は、韓国のファンや中国のファンの中心的な流れのどちらとも違っている。
日中韓でこの一件に対する立場が異なり、捻れていることはそれ自体興味深いし、韓国のアイドルグループにいる中国メンバーの脱退、という事態について妥当な事態の進展だと言えると思う。
自分は、日本と韓国の様子は大体において把握できるものの、中国語を解さないため中国の様子は友人からの伝聞に過ぎないのが心許ない。中国ではクリスの選択に対して歓迎・応援する旨の発言が見られるという。しかし、クリス以外メンバーのファンは、11人派陣営として、デマ拡散防止の浄化運動を熱心に日韓のファンに呼びかけている者も多い。
色々な言語で、多くのことばがやりとりされている。その内容は同じ対象についてであるけれど、全く反対のメッセージが、忙しなく行き交っている。
昨日から今日にかけて、韓国のファンサイトや個人アカウントが、次々に日本語で声明を出している。そのほとんどが先述の中国ファンの「状況整理」(中立を謳っているが、クリスを批判し11人の立場に立つ内容)のリンクを貼ったり、これからのEXOは11人であり、12人のEXOを求めてはならない、という旨であった。

「日本では、まだクリスのことを信じているファンが多いから。」
信じる、とは一体何を意味するんだったっけ。私は、誰の、何を信じているのだろう。

「誰々を、何々を信じないように。」
「信じないで」と言う後には、必ず「正しい真実」が付け加えられている。

…そして、クリスファンサイトのいくらかが、運営を終了する旨を表明した。

訴訟の時期と世論操作

今日に入って、訴訟の時期についても新たな噂が出回りはじめた。
とある「関係者」曰く、もともと、クリスの訴訟時期は1ヶ月前の4月19日に設定されていたという。珍島沖旅客船沈没事件が数日前に起こり、止む無く1ヶ月後に時期をずらした、というものだ(出処は韓国メディア)。
その記事には、クリスが訴訟を起こす前に「ブローカー」と接触した時期まで推測されており、彼の訴訟に至るまでの「用意周到さ」が強調されていた。一方で、クリス事変の第一報を報じたSinaを初めとする中国メディアでは、SMの非道さやクリスの健康状態の悪化など訴訟の背景に焦点をあてた記事が多いようである。
このように、クリスを、そしてEXOを取り巻く情報戦は、ファンの次元と大手メディアの次元を横断して、靄のかかった2つの城を競うように高く、高く建てようとしている。
個人的には、昨日今日出てきている情報戦に関して、11人サイドに関する劣悪なデマの類が、根拠に乏しい幼稚なものである点に疑問を持つ。クリス陣営が流しているとされる数々の流言は、それによってEXOを貶めるというよりも、むしろ対立構造を煽ってクリス本人を貶める結果を呼ぶ類のものであるように感じる。それが彼らの常套手段である、という意見にも、中国メディアに疎い自分からすると腑に落ちない。
そもそも、クリスサイドの目的が訴訟に勝つことにあるのであれば、証明すべき、もしくは大衆に周知させるべきはSMの「不当な扱い」についてのはず。無駄に11人のメンバーの個人的な中傷を流しても、ノイズが増えるだけで訴訟やクリス本人の大衆イメージにはさほど影響を与えないばかりか、返す刀で本人に悪いイメージが跳ね返ってくることは容易く予想できる。
もし、情報操作に長けたとするチームが11人メンバーのデマを流しているのが事実なら、こんな分かりやすい方法で果たして世論が操れるのだろうか。にわかには信じがたい。でも、これについては、もう少し時間を置いて確認することが必要なんだろう。
火のないところに煙は立たぬというけれど、「こう言っているらしい」「このように計画されている」といった伝聞ばかりが広まり、膾炙していく様子は、それがどちらの陣営に与する類の話であったとしても、火のないところに煙だけがあちこちに立ち、数多のファンがそれに踊らされているように見える。見えない炎に脅かされて、どんどんお花畑は煤けた灰色になっていく。
未だ、この事態に関するクリスを含めた12人からの発言は、メディアの記事やインスタグラムといった肉声以外のものに限定され、私たちファンは、確固たる拠り所を持つに持てない状況にある。
早く、確実な情報が欲しい。どうしてこうなったのか、今後どうしようと考えているのか。12人の本人と代理人らの公式声明を少しでも多く聴きたい。でも、きっと、一番知りたい情報は、声は、すでに失われてしまってこれからもずっと手にはいらない。
TLに流れるクリスの画像は、すっかり減ってしまった。編集されたファンアートの右下には、12人目の空白がやけに白く見える。

影を1体無くした寄宿舎で、あの犬の人形は、今夜も寂しく主人の帰りを待ち続ける。

[記録]クリス事変について思う①:5月15日、その木曜日

以前noteにあげたクリス脱退の一連の流れについての個人的な記録をここに再録したい。
全5回のうちの第1回。


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2014/05/18 03:51 


整理しないまま来週を迎えるのも怖くて、少しずつ記録をしていってみる。
15日午前、都市を分かつ川を渡るバスの中、「クリスが事務所相手に訴訟」の第一報を見た。動揺し、友人にLINEしてはtwitterに張り付いた。一時間ごとに「有力な」情報は変化し、言葉通り自分たちは何が事実なのか判断がつかないまま翻弄された。
午後2時、友人がソウル地方裁判所にアクセスし、ウーイーファンの名で訴訟が照会された旨を知る。
その日の夕方には、その第一報がEXO-Mのクリスだということ、契約の無効を謳った訴訟だということは否定しようのない事実として認知されつつあった。
第一報を聞いた瞬間、信じられない気持ちとともに感じたのは、「またこういうことが」という落胆だった。
自分がEXOを好きになってからというもの、去年の年末に事前録画を見に行った際に、「応援」とアイドルEXOと彼ら12人の青年、という3項の乖離について悩んだことがある。だが、それも一瞬のことで、しばらく現場を離れたファン活動の中、気の合う友人らとともにただただ彼らを愛でるお花畑ペンとして日々を過ごしていた。
自分が暫くの間見ないようにしていた問題を、今正に目の前につきつけられたような。目をそらしていた毒塊が「まだここにあったんだよ」と目の前に黒黒と光っているような既視感、と後悔。
某アーティストが言った「アイドルを応援することが、彼女ら(彼ら)を苦しめるという構造になっている」という言葉を、いまさらのように思い出す。
また、某がラジオで「応援」の勝手さ、について話していたなあと、同時に思い出した。
私の、私たちの「応援する」って一体何なんやろう。
本人の気持ちなんかわからないのに、自身の欲望を仮託して、それを「真実」のように大事にして。
クリスについて、私は、果たしてどれだけのことを知っていたのだろう。
知ったような気分になって「お兄たまお兄たま」「ギャラクシー」「ふぁんふぁん」と呼び立てて。ぬいぐるみとくっつけたり、彼の描く独特な画を愛でて。
私が見ていたぼんやりして、弱くて優しい「クリス」は、一人の青年ウーイーファンとはどの位隔たっていたのだろう。
自分が彼らを見て、愛でてきたこの間にも、彼は一人訴訟への準備を進めてきたということになる。
彼の気持ちは、何時からEXOから離れていったのだろうか。
一人で、誰にも相談せずに11人から背を向けようと決めた時の気持ちはどんなだったろう。
宿舎で、一人コッソリ部屋を抜けだして、どこかに電話を掛ける彼の姿を想像した。その後ろ姿は、狡猾にも周到にも賢くも見えなかった、ただ、暗い廊下にぼんやり浮かぶ、丸まった悲しい背中しか見えなかった。
その姿を、その心の動きを知りたいけれど、今となっては知る由もない。

現在、この事態について主な関心事になっているのは「クリスの動き」と「今後のEXO」のようである。その中で陣営としては、クリス側と残りの11人側というように、はっきりと2つに分かれつつある。日本はまだそれほどではないが、韓国や中国のファンはすでに流言飛語が飛び交い、本人たちがけして望まないであろう、罵りの応酬が始まっている。
様々な怪文書が出まわり、自身の希望に沿う「真実」を支持し、旗を上げて自身の立場を表明する。危険なことだが、SNSの進化した今日では、同意する意見を友人に周知することも、ボタンひとつで出来るようになった。
事態から2日で、様々なことばが生まれては、文字の海を流れていった。
信じる、戻ってきて、謝って、説明して、12人、11人、We are one、…
一部のファンが起こした行動を、他のファンが嘲笑したりひどく批判する様子も多くあった。もう、こうなると、ゲームに近い。誰が一番もっともそうなことを言うか。誰が一番「正しい」のか。本心と虚心の入り交じるTLは、未だかつてないほど感情に揺れていた。
「クリス」と韓国語で検索して、不特定多数のつぶやきを見ては、人の気持ちというものはこんなにも瞬間で変わるものなのかと驚愕する。
ざっと見た限りは7:3、もしくは8:2でクリスへの批判が目立っていた。メンバーが迷惑を被った、EXOというグループを裏切った、それにより、クリスはもう、メンバーではなく、憎むべき離反者になっていた。
クリスのファンをやめて、他メンバーのファンになると宣言し、アカウント名もIDも変えたユーザーも居た。ファンサイトは、それぞれ自身の立場を表明し、その中には少なくない中傷も含まれていた。
「クリスのファンはアンフォローして下さい」「もうクリスのファンアートは書かない」「今から○◯ファンになります」「EXOは11人」
当惑して、判断を保留しようとするファンも少なからず見られたが、そもそもそのような考えを持つ者は積極的に自身の立場を表明もしないだろうから、実際の割合は自分のみた7:3とは大分異なっているかもしれない。
それにしても、たった数日で、まるで悪夢のように一人のメンバーがグループを抜けるという「事実」が私たちの中で、様々な余波を伴って進行している様子を見続けるのは、さすがに堪えた。アリが地面で巣を広げるように、徐々に、確実に。12人のWe are one!の掛け声は、段々遠く脆くなっていく。
私たちは、誰かを憎むためにアイドルを好きになったのだろうか。
まだ、2日。もう、2日。