2014年9月12日金曜日

[記録]クリス事変について思う①:5月15日、その木曜日

以前noteにあげたクリス脱退の一連の流れについての個人的な記録をここに再録したい。
全5回のうちの第1回。


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2014/05/18 03:51 


整理しないまま来週を迎えるのも怖くて、少しずつ記録をしていってみる。
15日午前、都市を分かつ川を渡るバスの中、「クリスが事務所相手に訴訟」の第一報を見た。動揺し、友人にLINEしてはtwitterに張り付いた。一時間ごとに「有力な」情報は変化し、言葉通り自分たちは何が事実なのか判断がつかないまま翻弄された。
午後2時、友人がソウル地方裁判所にアクセスし、ウーイーファンの名で訴訟が照会された旨を知る。
その日の夕方には、その第一報がEXO-Mのクリスだということ、契約の無効を謳った訴訟だということは否定しようのない事実として認知されつつあった。
第一報を聞いた瞬間、信じられない気持ちとともに感じたのは、「またこういうことが」という落胆だった。
自分がEXOを好きになってからというもの、去年の年末に事前録画を見に行った際に、「応援」とアイドルEXOと彼ら12人の青年、という3項の乖離について悩んだことがある。だが、それも一瞬のことで、しばらく現場を離れたファン活動の中、気の合う友人らとともにただただ彼らを愛でるお花畑ペンとして日々を過ごしていた。
自分が暫くの間見ないようにしていた問題を、今正に目の前につきつけられたような。目をそらしていた毒塊が「まだここにあったんだよ」と目の前に黒黒と光っているような既視感、と後悔。
某アーティストが言った「アイドルを応援することが、彼女ら(彼ら)を苦しめるという構造になっている」という言葉を、いまさらのように思い出す。
また、某がラジオで「応援」の勝手さ、について話していたなあと、同時に思い出した。
私の、私たちの「応援する」って一体何なんやろう。
本人の気持ちなんかわからないのに、自身の欲望を仮託して、それを「真実」のように大事にして。
クリスについて、私は、果たしてどれだけのことを知っていたのだろう。
知ったような気分になって「お兄たまお兄たま」「ギャラクシー」「ふぁんふぁん」と呼び立てて。ぬいぐるみとくっつけたり、彼の描く独特な画を愛でて。
私が見ていたぼんやりして、弱くて優しい「クリス」は、一人の青年ウーイーファンとはどの位隔たっていたのだろう。
自分が彼らを見て、愛でてきたこの間にも、彼は一人訴訟への準備を進めてきたということになる。
彼の気持ちは、何時からEXOから離れていったのだろうか。
一人で、誰にも相談せずに11人から背を向けようと決めた時の気持ちはどんなだったろう。
宿舎で、一人コッソリ部屋を抜けだして、どこかに電話を掛ける彼の姿を想像した。その後ろ姿は、狡猾にも周到にも賢くも見えなかった、ただ、暗い廊下にぼんやり浮かぶ、丸まった悲しい背中しか見えなかった。
その姿を、その心の動きを知りたいけれど、今となっては知る由もない。

現在、この事態について主な関心事になっているのは「クリスの動き」と「今後のEXO」のようである。その中で陣営としては、クリス側と残りの11人側というように、はっきりと2つに分かれつつある。日本はまだそれほどではないが、韓国や中国のファンはすでに流言飛語が飛び交い、本人たちがけして望まないであろう、罵りの応酬が始まっている。
様々な怪文書が出まわり、自身の希望に沿う「真実」を支持し、旗を上げて自身の立場を表明する。危険なことだが、SNSの進化した今日では、同意する意見を友人に周知することも、ボタンひとつで出来るようになった。
事態から2日で、様々なことばが生まれては、文字の海を流れていった。
信じる、戻ってきて、謝って、説明して、12人、11人、We are one、…
一部のファンが起こした行動を、他のファンが嘲笑したりひどく批判する様子も多くあった。もう、こうなると、ゲームに近い。誰が一番もっともそうなことを言うか。誰が一番「正しい」のか。本心と虚心の入り交じるTLは、未だかつてないほど感情に揺れていた。
「クリス」と韓国語で検索して、不特定多数のつぶやきを見ては、人の気持ちというものはこんなにも瞬間で変わるものなのかと驚愕する。
ざっと見た限りは7:3、もしくは8:2でクリスへの批判が目立っていた。メンバーが迷惑を被った、EXOというグループを裏切った、それにより、クリスはもう、メンバーではなく、憎むべき離反者になっていた。
クリスのファンをやめて、他メンバーのファンになると宣言し、アカウント名もIDも変えたユーザーも居た。ファンサイトは、それぞれ自身の立場を表明し、その中には少なくない中傷も含まれていた。
「クリスのファンはアンフォローして下さい」「もうクリスのファンアートは書かない」「今から○◯ファンになります」「EXOは11人」
当惑して、判断を保留しようとするファンも少なからず見られたが、そもそもそのような考えを持つ者は積極的に自身の立場を表明もしないだろうから、実際の割合は自分のみた7:3とは大分異なっているかもしれない。
それにしても、たった数日で、まるで悪夢のように一人のメンバーがグループを抜けるという「事実」が私たちの中で、様々な余波を伴って進行している様子を見続けるのは、さすがに堪えた。アリが地面で巣を広げるように、徐々に、確実に。12人のWe are one!の掛け声は、段々遠く脆くなっていく。
私たちは、誰かを憎むためにアイドルを好きになったのだろうか。
まだ、2日。もう、2日。

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